「伝わる」を、みんなでつくる。レデイ薬局が採用動画を“育成の機会”にした理由

「伝わる」を、みんなでつくる。
レデイ薬局が採用動画を“育成の機会”にした理由

業種医薬品・健康志向食品・化粧品及び日用雑貨・食品等を販売するドラッグストア及び処方箋調剤を行う調剤薬局、インターネット通信販売の経営
従業員数954名(令和7年2月28日現在)
ご支援内容採用動画制作、週次伴走支援

愛媛県松山市に本社を置く株式会社レデイ薬局様は、ドラッグストアおよび調剤薬局の運営を中心に、地域の暮らしを支えてこられました。愛媛県を中心に252店舗、正社員954名(いずれも令和7年2月28日現在)という規模を持ちながら、日々の現場に向き合い続けています。

規模が大きく、地域での認知度も高い企業です。
一方で、新卒採用の現場では“身近さ”ゆえに、伝え方が難しくなる場面もあります。ドラッグストアという業態は日常の延長線上にあるからこそ、学生の側には「アルバイトのイメージ(レジ・品出し)」が先に立ちやすい。正社員としての仕事の幅や責任、チームで動く空気感——そうした“仕事のリアル”を、言葉だけで届け切るのは簡単ではありません。

採用市場も変化を続けています。学生の情報収集の仕方は多様化し、企業と出会う導線も増えました。だからこそ、これまでのやり方を守るだけでなく、毎年のように工夫を重ねながら、少しずつ更新していく。今回の採用動画制作プロジェクトは、そうした“止まらない姿勢”の延長線上で生まれた一手でした。

ただし、この取り組みは「採用動画を作ること」だけが目的ではありません。
もう一つ大切にされたのが、若手人事が育つ機会を、仕事のなかにきちんと残すこと。動画づくりを、組織の学びにつなげるプロジェクトでもありました。

今回お話を伺ったのは、採用を担うマネジメントの大野部長、採用現場をリードする佐々木リーダー、そして若手人事の手島様です。


「説明会を、“説明”で終わらせたくなかった」

プロジェクトの出発点は、とても実務的な課題意識でした。

「最初は、“伝わりやすい動画ができればいい”というのが一番のきっかけでした。説明会は担当者によって説明の仕方に差が出ることもありますし、学生さんからの質問も毎年ある程度パターンがあります。先に動画で説明できれば、説明会の場ではもっと中身のあるやり取りができるのではないかと思ったんです。」

説明会の時間は限られています。よくある質問への回答や基本説明に時間を取られてしまうと、本来いちばん大切な「学生一人ひとりの関心に合わせた対話」が薄くなってしまう。
動画で共通の説明を担保できれば、説明会は“説明”から“対話”へ近づけられる。そんな発想でした。

レデイ薬局 佐々木様

「言葉で『一日の流れ』を説明しても、学生さんには伝わりにくい部分があるんですよね。どうしても身近なアルバイトの印象と混ざってしまうこともある。実際に動いている社員の姿を動画で見てもらうと、学生さんの発見が増えると思いました。」

仕事のスピード感、声のかけ方、間合い、雰囲気。
言葉では伝えづらい“行間”を、映像はそっと補ってくれる。採用動画は、ただの見栄えづくりではなく、“伝える設計”として位置づけられていました。

“先入観”を越えて、正社員の仕事を届けたい

認知度が一定あるがゆえに、『レジ』『品出し』というアルバイトのイメージが強くついている。そのため正社員として働く姿がイメージされにくく、採用の間口が狭くなってしまう感覚がありました。

愛媛ではアルバイト先として人気。でも正社員となると話は別で、アルバイトの先入観が強いほど“そこに固定”されてしまう。だから“正社員の仕事”を、違う角度からきちんと見せる必要がありました。

この「違う角度からきちんと見せる」を、丁寧に形にしていく。
それが、今回のプロジェクトの軸になっていきます。

レデイ薬局 大野様(左)

外部パートナーに託したのは、「制作」だけではなかった

採用動画を作るだけなら、制作会社に依頼する選択肢もあります。
それでも今回、外部パートナーと進めた理由の中心には、育成がありました。

「採用の若い世代は、『ゼロから一を作る』ことに最初は難しさを感じやすい。過去のメンバーも、経験の中で何かきっかけを掴んで一気に伸びたことがありました。手島さんにも、そういう“きっかけ”が必要だと思っていました。外部の方と一緒に何かを作り上げるプロセスで、それを得てほしかったんです。」

社内だけではなく、外の視点を入れる理由も明確でした。

「社内の人が言うことと、社外の人が言うことでは、納得感が違う場面があります。社外の方は多くの企業を見ていて、最新の情報や視点を持っている。採用チームは人数も限られるので、外の人と仕事をすることで、新しい価値観にも触れられます。」

そして採用チーム側にも、「制作の外注」ではなく「自分たちで企画して作り上げる経験」にしたい、という意思がありました。若手が当事者として関わり、言葉を持ち、次の提案ができる状態になること。それが育成の狙いでした。

レデイ薬局様がアトモニに託した“決め手”

レデイ薬局様がアトモニに託してくださったのは、「制作の上手さ」だけではありません。
今回の目的に対して、“進め方そのものが合っていた”ことが大きかったと言います。

  • 単なる制作ではなく、育成まで含めて伴走できること
  • パッケージ化された型に当てはめず、状況に合わせて提案できること
  • 社内の意思決定や巻き込みを前提に、現実に回る形へ整えられること

「作って終わりにしない」こと、そして「その会社の事情を大切に扱う」こと。
この二つが、今回の狙いと重なっていました。

山場は、「一日の流れ」をやめた判断にあった

プロジェクトの初期には、「一日の流れ」を動画にする案もありました。分かりやすく、想像もしやすいテーマです。しかし、レデイ薬局様は“分かりやすさ”だけで進めませんでした。

「最初は“1日の流れ”という案もありました。でも、作りたいものをいろいろ出す中で『これは動画にしなくても良い』『これは動画にした方がいい』という区別がついてきたんです。『1日の流れ』は分かりやすい反面、現実的に成立するか、伝えたいことが本当に伝わるかを考えて、最終的にやめる判断になりました。人選や撮影の段取りなども含め、考え方を学べたと思います。」

レデイ薬局 手島様(左)、アトモニ 野中(右)

迷いながら決めていく。その“決め方”が、仕事の型になった

実務そのものが、育成の場になっていきます。動画のテーマや構成が定まらなければ、誰に協力してもらうかも、当日の段取りも決められません。だからこそ、「何を伝える動画にするか」を悩みながら言葉にして、少しずつ決めていく必要がありました。

具体的には、まず“学生に何を持ち帰ってほしいか”を起点に、伝える内容の軸を絞る。
次に、その内容が一番伝わるように、社内の撮影協力者をアサインしていく。
そして撮影当日を想定し、移動・段取り・時間配分を洗い出しながら、当日のスケジュール割を組む。

このスケジュールは、アトモニと一緒に「現実に回る形」へ落とし込みました。
無理なく進む段取りになっているか、撮りたいシーンは撮り切れるか、協力者に負担が偏らないか。そうした点を一つずつ確認しながら整えていく。
“企画→巻き込み→実行”の型が、実務の中で磨かれていきました。

手島様の変化:「分からないことが分からない」から、前に進めるようになった

今回のプロジェクトでは、若手の“仕事の進め方”にも変化が起きていました。手島様は社会人2年目。周囲は経験ある先輩ばかりで、不安も多かったといいます。振り返れば、「分からないことが分からない状態でもあった」と。

その時に力になったのが、アトモニ野中との毎週の1on1でした。

「毎週の1on1の中で、まずは発散でもいいので言語化していって…。話すことで、自分でも『何が論点なのか』が見えてきました。そのうえで、周囲の先輩から助言ももらいながら優先順位をつけて、仕事に取り組むようになりました。」

相談は、動画そのものだけではなかったと言います。Instagramなど日々の業務の中で、報連相の“型”が整っていきました。

「相談の仕方とか伝え方、報連相の部分は毎週の中で学びました。『どう伝えるか』『どう組み込むか』を教わっていました。」

話す → 整理する → 次の行動に落とす。そのサイクルが回り始めた実感もあったそうです。

「一旦思ってることをバーっと話をすることで、自分で気づいて整理して、次のアクションにつながっていました。自分で考えて実行するサイクルが回るようになった実感があります。」

“結果”として動画が残り、“価値”として人が育った

完成した動画については、こう振り返ります。
「議論しながら落としどころを探して制作しました。結果として、学生さんにとって柔らかい雰囲気で、レデイの社員のイメージが伝わる動画になったと思います。」
(大野部長)

そして当日については、こんな言葉もありました。
「当日も状況に合わせて柔軟に対応しながら、諦めずにやり切れたのが大きかったです。最短で作るのとは違う進め方だったからこそ、学びになったと思います。」
(佐々木リーダー)

実際に制作した採用動画

ただ、今回の取り組みが“良かった理由”は、動画ができたことだけではありません。悩みながら内容を決め、協力者をアサインし、段取りを組み、社内を動かしていく。そのプロセス自体が、若手にとっての経験になり、チームにとっての学びになりました。

制作物は、時間が経てば更新が必要になることがありますが、育った人と、育つための会話の型は残る。今回の取り組みは、その“残るもの”を増やすプロジェクトでもありました。


採用に、最初から正解はありません。
けれど、採用が難しくなるほど、「どう伝えるか」「誰が伝えるか」を丁寧に見直しながら、現場で回る形に整えている企業があります。

今回の取り組みも、完成物だけをゴールにせず、悩みながら決めるプロセスそのものを学びに変え、若手が言葉を持ち、周囲を巻き込みながら前に進める状態をつくっていくものでした。こうした変化は、大きな制度や派手な施策がなくても、日々の会話や進め方の工夫から生まれていきます。

アトモニは、採用を“丸ごと代行する会社”ではありません。
企業の背景や文脈を理解した上で、考えを整理し、選択肢を広げ、社内で納得して進められる形へ整える伴走者でありたいと考えています。まだ言葉になっていなくても構いません。
「何が課題か分からない」「何から手をつければいいか迷っている」
そんな段階からでも、現場の状況を共有するところからご一緒できればと思います。